週末は外出したり野暮用がきりなかったりで落ちててスミマセン。 明日まとめて色々上げる予定。
今日はちょっと余談を上げておきます。
先月はなぜかやたら本を買う月でした。 最初は仕事で必要な本を探しに行ったところから始まった気がするんですが そこで何かのタガが外れたのか、週2,3冊くらいの勢いで何かしら買ってしまい… しかも1000円越えの本ばっか; いつもは月2冊くらいなのに、どうしたことか(・・;) 勢いでアマゾンでアニメDVDにドラマCDまで買っちゃったし。 支出考えるのが怖いです(−−;) 3月は残業代が結構つくはずだから それでトントン…じゃ無理だろうなあorz
さて、そんな中で買った1冊。 茨木のり子さんの詩集『歳月』です。 茨木のり子さんは現代詩人で、私が一番好きな方。 とはいえ、2年前にお亡くなりになりましたが… それ程多作な方ではなかったので、詩集は全部持っているつもりでいたのに ふと見ると、見覚えのない詩集があって「!?」と思って手に取りました。
茨木さんの作風は 女らしい品の良さと包容力に溢れた優しさをベースに 男らしい高潔さと大勢に媚びない自尊心を持った凛とした印象です。 その高潔さが、凹んでいる時に気持ちを奮い立たせてくれるので 私はいつも傍らにおいて、自分に喝を入れたい時に読み返したりしていたのですが 今回の『歳月』を読んでびっくり。 この詩集は旦那さんに先立たれた後、一人で残された31年の間に 亡くした旦那さんへの想いを連綿と書き綴った恋歌でした。
いつも、だらしない世相にピシャリと厭味を言い放ち 自身の老いすら笑い飛ばし 凛とした雄々しい言葉ばかりを紡いでいた茨木さんの中に こんなにも生々しいまでの女心が潜んでいたとは。 あまりに意外な一面を見るようで、第1章を読む内は 見てはいけないものを見るような居心地悪さで こちらの方が照れてしまい 第2章で、それでもまだ連綿と続く思慕の重さに なんだか泣きたくなってしまいました。
『獣めく』
獣めく夜もあった にんげんもまた獣なのねと しみじみわかる夜もあった
シーツ新しくピンと張ったって 寝室は 落葉かきよせ籠り居る 狸の巣穴とことならず
なじみの穴ぐら 寝乱れの抜け毛 二匹の獣の匂いぞ立ちぬ
なぜかなぜか或る日忽然と相棒が消え わたしはキョトンと人間になった 人間だけになってしまった
最後の解説を読んだら、この本は 茨木さんの没後に遺族の方が出版された本だそうです。 それで見たことなかったのか(^^;) 生前、茨木さんは発行の意志は明言していたものの 「恥ずかしいから」とおっしゃって 誰にも見せていなかったとのこと。 彼女らしい乙女心に、なんだか和みました(笑) 実際、本編を読むと気持ちはわかります。 びっくりするくらい熱い恋歌。 夫婦愛好きには、相当響く一冊。
あ、ちなみに詩集のタイトルは遺族の方が便宜上決められたそうですが 私は『歳月』より、詩が収められていた箱に書いてあったという『Y』が ふさわしかったと思います。 『Y』というのは、亡くなった旦那様のイニシャル。 秘めやかでつつましく、尚且つ万感こもった重さがあって 実に茨木さんらしいと思うのですよ。
もともと夫婦愛に弱いんですが 「生木を裂く」とはこういうことを言うんだろうなあ…とか。 そのまま流れで、ついつい飛虎×賈氏のことを考えてしまいました。 飛虎は生きている内に賈氏ちゃんを失って それはそれで、もちろん辛かったことは間違いないけれど もし賈氏ちゃんが生きていたら、自分が死ぬ時 残していく苦しみを負わねばならなかったわけで それを思うと、どちらが良いとも言えないなあ…っていうか。 どっちにしたって辛いのは当たり前だけど 先立たれたことで、自身が封神される時は 「ついに逢いに行ける」というある種の喜びも持てるわけで…。 死はそれだけで辛いのに、さらに残されたものを思うとやるせなく それがないだけ、ある意味での幸せを見出せるのかもしれない。
正直他人がそういうことを言うのはなんかイヤで (なんていうか、そこに含まれる夢見がちな陶酔が苦手というか) あまりその辺は考えないようにしていたのだけれど 茨木さんがあまりに故人を恋い慕い、そこに行ける日を願い続けるので 飛虎もやはりそうだったのだろうかと思わずにいられません。
まあ、その想いを生前決して他人に見せなかったところが 実に茨木さんらしいと思うし 飛虎もまたそうであったのだろうとも思うのですが。
飛虎といい、茨木さんといい、「美しく生きる」ということについて 考えさせられる人たちです。
『急がなくては』
急がなくてはなりません 静かに 急がなくてはなりません 感情を整えて あなたのもとへ 急がなくてはなりません あなたのかたわらで眠ること ふたたび目覚めない眠りを眠ること それがわたくしたちの成就です 辿る目的地のある ありがたさ ゆっくりと 急いでいます
25年連れ添って、その後31年お独りで過ごされ ゆっくりと急いで、2006年2月、茨木さんは亡くなられました。 ご冥福をお祈りします。
※『獣めく』『急がなくては』いずれも茨木のり子詩集『歳月』(出版:花神社)から引用。
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